思春期お絵描きブログ

趣味で小説やイラストを投稿させていただきます。<(_ _)>

くちなしの花!6「ゲリラ豪雨!」

それからも、雨の激しい勢いで押し寄せてくる水の流れはしだいに斜め坂の下に向かって、川から独流のように強くなっていった。すでに、周りは真っ暗で人通りもない!
しかも後輪が脱輪したようで、ハンドル操作も出来ずに、さすがの泰蔵もあせったのか、手に汗を握っていた。
ドアを開けて後ろのタイヤの様子を確認しようにも、ま下のタイヤの半分くらい黒い水が浸かっていて降りにくい状態だった。
泰蔵は経験もほぼなかったこの状況に、スマホで何度もタクシー事務所に報告しようとかけていたが、一時の電波障害かつながらなかった!
あ~くっそお~、出ろこの~!(# ゚Д゚)冷静さを失いつつ、つい心の声が口からもれそうになったが、後ろの座席にお客を乗せている事もありプライドの高い泰蔵は、なんとか理性はたもっていられた感じだ。


そして、とりあえずスマホはあきらめ冷静に今度は車内のラジオに手を伸ばしてつけると、ザザッとノイズは入りながらだが何とか、近隣のニュース情報の声が流れてきた。


ニュースの声「今日の夕方、神〇駅の近くに住む山本夫妻が布のようなもので首をしめられ殺害されました。犯人はこの家に一緒に住んでいた実子の大学生の可能性が高いとされ、犯行に及んだ末、自宅から逃走したものとみます!実子は事故で半身が動けなくなった実の母親の身体介護をほぼ毎日のように行っていたため大学やアルバイトを掛け持ちの毎日だったことが過労のストレスとなり殺害してしまったという理由の可能性が近所の住民から指摘されています!父親もこのところ体調を壊して会社の無断欠勤が続いていて、さらにギャンブルぐせもひどかったらしくちょうど、帰ってきた所でタイミング的に出くわしてしまった為、動揺して自宅の包丁で胸を刺してしまったもようです!」


ノイズの音が混じりながら窓にはげしい雨粒がぶつかっては、稲光が真っ暗な空を走り、何度もとどろきを響かせる!


泰蔵「(はあ・・?神〇駅って、俺の勤務先のポジションじゃねぇかよ!物騒な事件起こしやがって!よりによってこんな退職日に、ほんとついてないぜっ・・て、ん!?(-_-;)逃走中・なんだよな、犯人ってのは・・?俺がさっき・・客を拾ったのも、この駅の近くだったような、まさかな、犯人は大学生って言ってたし、ちげぇ・・よな・・・?)」


天気を聞くつもりが偶然流れてきた不吉な情報に、泰蔵はふいに後ろからの座席の視線を意識して、嫌な予感が走った!

くちなしの花!5「氷の眼!」

少年が、手を上げてこちらに合図しているのを見たらやはり職業ドライバーとしての性がのある泰蔵は止めないのもどうかと迷い少年の前までくると、しぶしぶ後ろのドアを開けた!


泰蔵(まあ、このまま無視して、会社に戻ってもよかったがな、今日はほとんど客もつかなかったから見納めにはちょうどいいか!今日分の給料まで払ってくれるったって、さんざん迷惑かけたあげく、とんだ、給料泥棒の野郎だったなんて、後からねちねち他の連中からも、噂されかねねえしな!さすがに俺のプライドが許さねえ!(-_-メ))


のちに、この良かれと思って起こした仏さん心の行動が後悔することになるとはこの時夢にも思っていなかった・・・!


泰蔵のそんな思惑とも知らず、小雨に濡れた少年はすかさず後ろの車内に入り込むとどさっと真ん中に足を広げて堂々と座り込んだ!身長は泰蔵より少しだけ高いくらい!体型も泰蔵と比べればやせ型だろう!茶髪にうっとおしく目に入る前髪!地味な赤の服に青いズボン、裕福そうには見えないしとても、タクシーを常連している感じにも見えないと泰蔵は勝手に思ったが決めつけるのはよくないとすぐ冷静にいつもの慣れた業務対応にはいった!


泰蔵「ちょっと本降りになってきたね!どちらまで!」


少年「・・・海まで!」


泰蔵「ああ!」


少年「駄目ですか!?」


泰蔵「いや、駄目じゃねえですけど、こんな時間から海なんて、しかもこんな天気な時に、誰か待ち合わせでもしてるんですか!?」


少年「無理なら近くの山でもいいです!」


泰蔵「はあ、山って!言われてもねぇ!(-_-;)」


なんだこいつは、さっきから!とんちんかんなオーダーばっか出しやがって、はりたおすぞ!
泰蔵は、少年の意味の分からない対応に口にでかかった怒りをぐっとこらえる!
そして、ハンドル横のナビを操作しながら、


泰蔵「この近くだと、ちょっと外れにハイキング山コース山神の里ってゆうのならありますね!」


少年「じゃあそこまで!」


おいおいおい、大丈夫かこいつ!不良とまではいかねえが、態度いい感じじゃねえし!まさかやべえやつじゃねえよな!そういや、だいぶ前に、タクシー運転手を狙って後ろから刃物で切り付ける悲惨な連続事件があったよな!こいつもその類(たぐい)か!なわけねえよな!


泰蔵は車を走らせながら、沈黙の続く車内をどうにかかき消そうと、何かと、少年に話題をふろうとする!冷房を強風にしたままだったのを思い出して!


泰蔵「ああ!そういや寒いですかね!ぬれてるのに、すいませんね私暑がりなもんで!それと、タオルそのはしにある私のカバンに綺麗なの何枚か入ってるから使ってくれていいからね!」


カバンは座席のはしの下に無造作に転がっていた。
少年は、たいして反応もせず、下を向いたまま小声で・・・!


少年「・・・平気です!」


泰蔵「あと、この花(くちなし)の匂いも、私の汗臭い体臭とか臭わないかなと、きつくないですか!」


少年「・・・!」


少年はめんどくさそうに下を向いたままそれにはこたえなかった!


ナイフとか出してこねえよな!泰蔵はそのあともしきりと真上のルームミラーで後ろの少年の様子を伺いながら、何かと話題をふろうとした。


泰蔵「お客さん大学生!」


少年はなんだか質問される事事態がうっとおしそうに!


少年「受験生です!まだ、高校です!」


無愛想なやつ、ちゃんと目えみて話さんか!そんなんだと面接おちるぞ!(-_-メ)


泰蔵「じゃあこの夏踏ん張りどころですね!私は、中卒で大学行ってないんで、はは、詳しい事は、分かりませんが!」


ミラーにうつる少年はぼんやり横を向いて窓の外をながめている!
そんな愛想の悪い態度に泰蔵もしだいにあほらしいとわれにかえり、数分で会話をふるのをやめた!そしてそれから、だんだんと雨足が強くなってゆくなか、1時間半ぐらいたってようやく目的地のハイキングコース近くの山道ののぼりに差し掛かったときには、運転席前のデジタルは午後7時近くになっていた。何だかんだと、天候が悪く安全第一の運転で走ってきたためこんなに遅い時間になってしまった。おまけにすっかり薄暗い!
ちらりとミラーに目をやると、いつの間にか少年は顔をあげていてまともに目が合ってしまう!服はもう乾いていて、無感動な瞳、どこか氷のような冷たい視線に泰蔵は薄気味悪さを感じてしまい思わず目をそらした。気のせいかうっすら口元に薄ら笑いが浮かんでたような気もした!
それでも、泰蔵はようやくこれで業務が全部終わると思い、締めの感じで少年に話しかけた!


泰蔵「お客さん、私、実はいろいろありましてね、今日でこの仕事退職することになったんすよ!で、お客さんが私の運転にのる最後の方ってわけで!なんて言うか、毎日のように乗り回していた車だから、やっぱり自分の車みたいに愛着みたいなものがありますね!」
自分で言ってて、ちょっとだけ、酔いしれてしまう泰蔵!
だが少年は泰蔵の話しにはまるで興味なさそうに、下を向いて大きなあくびをしたかとおもうと急に!


少年「この山もういいんで!どこか別の所、適当に走ってください!」


泰蔵「なっ!Σ(゚Д゚)」


こいつけんか売ってんのか!(# ゚Д゚)


泰蔵「いや、お客さんもうハイキング山すぐそこですけど、ここまで来ていきなり適当にその辺走れって、それはないでしょ!」


さすがのこの要望には、泰蔵もしびれをきらしたが、


泰蔵「引き返すのはいいっすけど、その分延長料金かかっちまいますよ!(-_-メ)」


つい、客を目的地におろす事ばかり考えてた!だいたいそうだろう!よくよく考えて最初からどしゃ降りの中ハイキングの山ってのもおかしな話だろ!職業がらつい客のオーダーにのってしまうわりい癖!俺とした事が!
既に、5000円の数字を超えているメーター!


早い話こいつちゃんと、金持ってんのか!つい、素の強い口調が出かけてハンドルを思い切りきりバックしかけた時、突然車の振動と共にがくんと後輪のタイヤに鈍い音が!脱輪か!Σ(゚Д゚)


数分てこずっていると細い傾斜の砂利道に川のような雨!ワイパーもほとんどきかなくなっていた!
ハイキングコースとはいえ、傾斜の多い道、ひとたびはげしい雨がふれば流れおちてくる水の量は滝のように勢いづけてくるだろう!


泰蔵「(なんかやべえ事になったぞ!Σ((;°Д°;)))」


そんな焦る泰蔵とは真逆に後部座席に座る少年は相変わらず冷めた視線で泰蔵をみていて他人事のような感じだった!

くちなしの花!4「やばい乗客!」

車を走らせて気分も穏やかにおさまりはじめていた時、突然一本の電話の着信が!泰蔵はスピードをおとしながら周りを確認する!


泰蔵「はい!( ̄o ̄)」


そして、すずしげな顔で携帯スマホに出ると、少したじたじした様子の男性事務員の声が・・・。


事務員「ああ、熊沢さん!鷲見タクシー事務所のものです!勤務中申し訳ないです!」


泰蔵、あきらかに、すました対応で・・。!


泰蔵「いや、そんで、何か?( `ー´)ノ」


その反応に事務担当はさらに、言いにくそうな声で・・・。


事務員「実は先ほど、ちょっと前にでしてね!こちらの事務所宛のホームページへ熊沢さんの、その・どこかのお店でしょうか!大声をあらげていらっしゃる、動画がメールで送られてきたんですよ!」


大蔵「は、はぁあ!(# ゚Д゚)」


泰蔵はいつものくせでつい大声をあげてしまう!


事務員「そ、それとですね、わが社のタクシーに不機嫌に乗りこまれる姿も、バックのナンバープレートつきの画像と一緒に送られてきましてね!これに心当たりあられるかと思いまして連絡させていただいたのですが・・・!」


さらに声が怒りっぽくなってしまう泰蔵!


泰蔵「あれは、向こうの接客態度に問題があって、俺も少し声をあげただけで!(# ゚Д゚)」


事務員も、それいじょうは聞きたくなかったのか、たじたじしながらも、会話をさえぎって!


事務員「も・申し訳ありません、他にも先ほどからいろいろメッセージがきていまして、流石に画像つきのクレームがいくつも届いてしまわれると、原因はどうであれ、当社の信用もかかってしまうので、上の方からも解雇するようにと直接命令されてしまったんです。これまでも度々ですけど熊沢さんに対するクレームも上がっていましたし・・・!」


何となく、心当たりがあるのか泰蔵も思わず口をつぐんだ。


大蔵「ううっ、・・・(-_-メ)」


ばつが悪そうな、早口で、対応を続ける事務員!


事務員「幸い会社の方からは、解雇以外特に損害とかの対象からは外されたようで!今日、夜勤まで、シフトを入られてたと思うんですが、これからすぐ、戻ってこられてもしっかりとその分まではお支払いする形となりましたので、後ほどお待ちしていますね!」


そういうと事務員は泰蔵の返事を待たずそのまま逃げるように電話をきってしまった。
事務所からのいきなりの対応にしばらく、ぼうぜんとしてタクシーを走らせていた泰蔵だったが、やがて数分後われにかえると、鬼のような形相へ変わりわめきはじめた!


泰蔵「ああん、くっそお、あいつら余計なまねしやがって、何様のつもりだ!こそこそゴキブリみてえにネットで陰口書きまくりやがって!気色わりい!あれは、完全にてめえらのおち度だろ、ちょっと、俺が声上げたくれえでおおげさに犯罪者扱いで吊し上げして、てめえらは英雄気取りってやつか!ふざけんな!(# ゚Д゚)」


泰蔵は運転中にもかかわらずお節介にも事務員が送ってきた店での自分の暴言騒動を再生し目を通すとますます怒りが蘇ってくる!1人おかまいなく、がなりちらして、同時に体温も急激にたかまり車内の冷房も強風にして、アクセルも乱暴にふかす!


画面タイトルやコメントには、「昼間の店内で叫び狂ってた勘違い殿様気どりのいかれクレイジジィ~」「ただただ、迷惑でしかない」「うわあ~、こいつの運転マジ暴走しそう、乗りたくねえし」「空気読めねえハゲおやじ。修行僧でもして出直してこいよ!!(笑)」「生まれる場所、ゴリラ星と間違えてねえ( ̄▽ ̄)」「完全、人間終わってるわ~\(^o^)/」・・・!


泰蔵「けっ!こそ泥どもがなめくさりよって!人に断りもせず誰が盗撮していいって言った?!さんざんこけにして被害者ぶってるてめえらの方が犯罪者だろうが!まじで訴えるぞ!(# ゚Д゚)」


その勢いで横の助手席に携帯スマホをぼんと投げつけた!
車内をずっと甘い香りを放っているくちなしの花は今の泰蔵には少しも癒し効果にはならず!
やり場のないうらみを吐き出しながら、それでも、しぶしぶもと来た道を引き返す泰蔵!再び凄まじく燃え上がった憎しみの感情はおさまらなくて!


泰蔵「会社も会社だ!何が幸いだ!損害請求される事なんかこっちはなんもしとらんわあほが!ここぞとばかり、鬼の首取ったみたいに!普段から人の顔色ばかりうかがいやがって、前々からクレームがあったならその都度直接言えばいいだろうが!まあ、客に顔でビビられることはあっても、それ以外何もしてねえがな!人のあら捜しするのがそんなに楽しいか!ああ!きさまらも結局みんな一緒なんだよ!いいか悪いかなんて勝手に外面と空気で判断しやがって!(# ゚Д゚)」


そして幸いにも、事故を起こす事なく昼前ごろ待機していた葬儀会館のある裏道にタクシーで差し掛かった時、助手席に投げ捨てたスマホの画面に午後4時を知らせる青いランプが光った。空は相変わらずどんよりと黒ずんで優柔不断な天気でなかなかほんぶりの雨足にかわらなかったが、今少しずつようやく強くなり始めていた。
ここまでだいぶ暴走したせいで、多少はストレスの減少にはつながったのか泰蔵の呼吸もけっこうおちつき、ため息まじりで「さみいな(-_-メ)」と、マイペースに、下げすぎた車内の温度を調整しょうと冷房に手を伸ばした。


が、その時ふいに、走っていた、細い道の横から1人の人間がふらりと現れて来てとっさに、急ブレーキをかけた!


泰蔵「ああん!なんだあいつは、あぶねーぞ!ちんたらしやがって!ひかれてえのか!(# ゚Д゚)」


と、車内で声を張り上げて泰蔵は、眉間にしわをよせ思わずクラクションをならそうと構えたが、そのたちどまった少年らしき人物が瞬間こちらに向かって右手をあげたのが窓をたたく雨粒にまじって視界に入ってきたので、思わず手をひっこめた!